その上で、秋になり、新米がとれるようになり、新米の放射線検査が行われました。そして、福島県の知事が「安全宣言」を出しました。こちらの記事ですね。
福島のコメ、全域で出荷へ 知事が安全宣言
重要なのは、これが国際的にみても非常識な500Bq/kgという数値を超えるかどうかで判断されたということです。基準値を上げれば、そりゃ、全部合格しますよね。
それでは、この基準値を下げればどういう世界が見えてくるでしょう。たとえば、ウクライナではパンについて20Bq/kgの基準値を採用しているようです。この基準値を日本のコメに当てはめたとしたら、福島のコメに「安全宣言」は出せるでしょうか。
これまでの福島県の農産物の放射線検査の結果は、こちらのページにまとめられていて、タブとチェックボックスによって該当する農産物を絞り込めるようになっています。
ふくしま新発売 農林水産物モニタリング情報
このページで、コメにチェックを入れてデータを出すと、50件ずつの表で34枚、合計1689件の調査結果が出ます。ほとんどがNDですね。特に、放射性ヨウ素は、さすがにこの時期まで残っていないのか、全てNDです。
このNDを、仮に0として、セシウム134 とセシウム137の数値を足し合わせます。本当はゼロにすべきではないんですよ。7Bq/kg以下の数値は表に出てきませんから、おそらくその辺りが検出限界なのでしょう。だとしたら、たとえばセシウム134が6ベクレルで137が5ベクレルの合計11ベクレルのコメがNDと表現されていたりする可能性もあるわけです。ですから、慎重側をとるならNDを5とか6とかに置き換えるほうがいいのですが、そうするとそれはそれで過大評価みたいに言われますから、とりあえずはゼロとします。そして、セシウム134とセシウム137の数値を足しあわせて、ウクライナのパンに相当する20Bq/kgを超えるものが何件あるか調べます。
簡単なエクセルの操作で、すぐにソートアウトできます。答えは172件です。
1689件中、172件はアウトなんですよね。つまり、1割のコメは、基準を変えるだけで汚染米になってしまうわけです。そして、1割が汚染されているような地域で「安全宣言」なんて出せるわけはありませんよね。
国が500Bq/kgの基準を変えたがらない理由が、このようにして浮かび上がります。けれど、そうすることで、国は危険なものを安全と呼び、不必要に「風評被害」を拡大させています。誰がこんな「安全宣言」を信用するでしょう。そして、福島のコメの値段は暴落します。NDで、国際的にみても「安全」と呼べるコメまで巻き添えを食うわけです。これは、国家が仕掛けた意図的な被害です。
こういういい加減なことをいつまでもしていてはいけないでしょう。正しい基準値を採用し、安全なものを安全、危険なものを危険と正しく呼ぶことでのみ、「風評被害」は防げるのです。危険なものを安全と呼んで売ろうとするから、だれも買わなくなるのです。商売の基本じゃないでしょうか。
もちろん、20Bq/kgが安全というのには、何の根拠もありません。過去のコメの含有量の履歴から考えたら、おそらく5Bq/kgあたりが正しい基準値ではないかとも思います。けれど、そうなると、上記の検出限界の問題から、「安全」と呼べるコメはこの世に存在しなくなります。そういうものかもしれないのですが、それはそれでやっぱり日常生活には差し支えてしまいます。
どこかで妥協しなければならない以上、五十歩百歩なのかもしれません。それでも五十歩には五十歩なりの合理性はあると、そんなふうに思います。

